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会計・監査ナレッジ
Vol.
4
東証の新市場区分と新規上場について
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代表社員/公認会計士
小田哲生

東証では、2022年4月1日を目途に新市場区分への移行について実施すると公表しています。

したがって、これから上場準備する会社はほぼ、新市場区分に従って上場市場を定め、準備をして申請するということになります。

新市場区分は、プライム、スタンダード、グロースの3つに分かれていて、プライムは流通株式時価総額が100億円以上、スタンダードは10億円以上、グロースは5億円以上となっています。

流通株式とは、役員などの特別利害関係者が保有する株式と10%以上保有する大株主と自己株式を除いた株式数を意味します。東証は、流通株式時価が高い株式について流通市場において適正な株価が形成される可能性が高いと考えていると思われます。

上場以前の段階では、ほとんどの会社が流通株式比率は0に近いでしょうから、上場時における株式の公募売り出しで流通株式比率を高め、これらの基準をクリアすることになるでしょう。

プライム基準は現在の東証1部より若干厳しく、現状の東証1部上場会社約2200社のうち600社程度はプライムではなくスタンダードになるだろうといわれています。現在東証2部は475社なのでスタンダードは約1000社くらいが想定され、マザーズ356社、JQS665社、JQG37社については、一部がスタンダード入りをして大半はグロース市場になると思われます。したがって、新市場区分ではプライム1600社、スタンダード1000社、グロース1000社くらいになるものと想定されます。

新規上場に関していえば、従来の直接1部上場に比べ直接プライムは少し敷居が高くなったといえるでしょう。経常利益でコンスタントに20億以上出している会社で、上場時の時価総額が200億から300億以上目指せる会社でないと難しいかと思われます。(利益基準としては最近2年間の利益合計が25億円以上とされています。)

一方、スタンダードに関しては、難易度は大幅に緩和されています。(最近1年間の利益が1億以上とされています。)ただし、従来の本則基準と同等になることが予想されますので、開示に関しては上場初年度からのJ-SOXの適用が想定されます。

グロース市場に関しては、従来のマザーズと近いといえますが、成長可能性に関してより細かく定義されています。

グロース市場の上場要件

1.事業計画

  • 事業計画が合理的に策定されていること
  • 高い成長可能性を有しているとの判断根拠に関する諸幹事証券の見解が提出されていること。
  • 事業計画及び成長可能性に関する事項が適切に開示されていること(ビジネスネスモデル、市場規模、競争力の源泉、事業場のリスクなどの適切な開示、上場後も)

2.流動性

  • 株主数150人以上、流通株式数1,000単位以上、流通株式時価総額5億円以上。

3.ガバナンス

  • 流通株式比率25%以上。

以上より、従来よりマザーズ上場を目指してきた会社に関しては大きな変更はないと考えられますが、 事業計画の要件が厳しくなってきているので、その点について主幹事証券と事前に十分打合せをしておくことが必要でしょう。個人的にはインターネットのマーケティング技術を駆使して成長を促進するというグロースハッカーたちがより活躍できるように思われます。

なお、本稿の見解はあくまで執筆者の個人的見解であり、内容を保証するものではありません。また、東証の市場区分について詳しく知りたい方は東証のホームページにある「新市場区分の概要等について」2020年2月21日を参照ください。

小田哲生
資格:公認会計士・税理士
実績:IPO実績42社(公認会計士業界最多)
約30年在籍した「あずさ監査法人」にて、約24年、42社の企業公開(IPO)に携わってきました。公認会計士業界では、企業公開の数は、最多となります。その経験を活かして、企業公開支援などを含めてお手伝いをしていきたいと思います。

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