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会計・監査ナレッジ
Vol.
7
収益認識に関する会計基準(債権・契約資産について)
監査法人Verita
CEO/公認会計士
舩津丸 仁

1.はじめに

「収益認識に関する会計基準」(以下、基準)の論点のひとつが、
従来は「債権」(※1)(売掛金など)として開示されていたものの一部が、「契約資産」(※2)に分離することです。

※1 基準での正式名称は「顧客との契約から生じた債権」です。
※2「契約資産」 という新しい勘定科目が発生します。

2.定義

ここで、両者の定義は以下のとおりです(基準10項、12項)。

なかなか難しい定義ですが、ポイントは「無条件かどうか」という点にあります。
上記の定義のイメージは以下のとおりです。

3.事例を用いた解説

工事契約を請け負っているA社が、工事進行基準(※3)で下記のような仕訳を起こした場合
※3 説明の便宜上、古いワードを使用しています。

(資産)××× /  (売上)×××

ここで、借方の資産属性のものが、「債権」と「契約資産」のどちらであるか、という論点です。
工事進行基準はあくまでも見積もりでの計上であるため、そこで計算された金額が下記のどちらに該当するかによって峻別されます。

(1)顧客に請求するのみで、入金を得ることができる場合(=追加の役務提供が不要な場合)
 → 「債権」に該当

(2)あくまでも社内的な見積もりに過ぎず、まだ顧客に請求できない場合(=請求までには追加の役務提供が必要な場合など)
 → 「契約資産」に該当

以上のように「入金を待つだけかどうか」で「債権」と「契約資産」が峻別されます。

4.開示

当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報として、下記について開示します(基準80-20項)。

(1)期首・期末残高(債権・契約資産についてB/Sで区分して表示していない場合)
(2)(意図的に削除)
(3)残高の重要な変動がある場合のその内容(当期中の契約資産について)
(4)①「履行義務の充足の時期」 が 「通常の支払時期」 にどのように関連するのか、②それらの要因が残高(契約資産)に与える影響の説明

5.まとめ

以上、今回の「収益認識に関する会計基準」で求められる「債権」、「契約資産」の考え方を概観しました。
ほとんどの企業において、「債権」と「契約資産」についての整理は必要となります(最終的に重要性の観点から、開示を省略することも含めて)。
本質はシンプルであるものの、実際の検討においては工数がかかることが想定されるため、期末決算の事前に検討しておくことが大切です。

舩津丸 仁
2010年に公認会計士試験合格。株式会社ベクトルに入社、担当者として上場プロジェクトを推進し、マザーズ上場を達成(2012年)。その後、監査法人トーマツ(トータル・サービス事業部)に入所、上場プロジェクト(上場達成は10社以上)などに関与。2020年に独立。現在は、自身が一桁の合格順位を記録したメソッドと「正しい勉強を続ければ、誰でも公認会計士になれる」を合言葉に大学で教職に就くなど、後進の育成にも力を入れている。「すべては気持ち次第」という楽観主義者。

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