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株式上場(IPO)を達成するためには、十分な準備期間を持ちしっかりとした体制整備と制度の運用が必要となります。ここでは、IPOを果たすためにどのようなスケジュールで何を行う必要があるのかの概要を説明したいと思います。IPOのスケジュールと具体的に何を行う必要があるのかを事前に十分に理解することで、効率的、効果的にIPOを達成することが可能となります。
IPOを達成するには、以下の標準的なスケジュールをこなす必要があります。
ショートレビューの実施から証券取引所の審査による上場承認まで最低でも3年は必要であり、その間に社内体制の構築を行うことにより、私企業から公企業への階段を上り、晴れてIPOを達成し上場企業の仲間入りとなります。
ショートレビューとは、監査法人による短期間(通常2〜3日)での課題抽出を行うための業務をいいます。呼称は、予備調査、短期調査、クイックレビューなどさまざまです。主に関係者へのヒアリングと、現時点での会社資料(税務申告書等会計資料、契約書等証憑、株主一覧表等会社資料)の閲覧を行うことにより実施されます。実施後現時点での会社の課題をまとめた報告書が作成され、今後のIPO準備のためのマイルストーンとして利用されることとなります。証券会社によっては、この報告書の提出を必須とする場合もあるので、IPOの必須の業務といえます。
2のショートレビューを実施し課題が把握された後、スケジュールによっては課題解決のために十分な時間が必要となる場合があります。そのような場合には、4会計監査に入る前に監査法人とアドバイザリー契約を締結し、当該課題解決を行う場合があります。これにより、監査法人との会計監査契約をスムーズに行うことが可能となるメリットがあります。
例えば、2021年3月期決算企業から適用が求められている「収益認識に関する会計基準」(以下、「収益認識基準」)は、企業活動の根幹となる売上取引にかかる会計処理に関する基準であり、会社のビジネスによっては、売上の会計処理が劇的に変わる可能性があるため、「収益認識基準」に照らした取引の検証を十分に行う必要があります。
しかしながら、この検討を行わないまま会計監査契約を締結した場合、監査契約締結後の検討の結果、予期せぬ会計処理を求められ、会社の意図しない会計処理を行うこととなるばかりか、場合によっては、会計監査契約を締結できない事態に陥る恐れもあります。
このようなことがないよう、会計監査契約締結前にアドバイザリー契約を締結し、事前の十分な検討を行うことが重要となります。
IPOを実現する期を申請期・上場期と言いますが、申請期・上場期の直前2期間において監査法人の会計監査を受ける必要があります。この会計監査契約を金融商品取引法に準ずる監査(準金商法監査契約)と言います。
証券取引所の上場のためのルールである「上場規程」では、日本公認会計士協会の「上場会社監査事務所名簿」に登録している監査法人による監査を受けていることを必要としていますので、会計監査の契約を監査法人と締結する際にはその点の留意が必要です。
なお、次世代監査法人IPOフォーラムに所属している監査法人は「上場会社監査事務所名簿」に登録されている監査法人で構成されています。
晴れてIPOを実現し上場企業となった場合、上場企業は「内部統制報告書」の提出と「内部統制監査」が必要となります。
内部統制報告書の提出は、内部統制に関する制度(内部統制報告制度)に基づき行われます。この内部統制報告制度とは、開示資料である財務報告資料を作成するに当たり、作成するために関連する社内組織において、牽制機能など(これを総称して「内部統制」といいます)が適切に整備され、有効に機能していることを会社(経営者)が自ら評価することをいいます。そして、会社が提出した内部統制報告書の内容通りに内部統制が整備され機能しているか否かについて監査法人による監査が求められています。これを「内部統制監査」といいます。
この内部統制報告書の提出のために実施する評価には、会社の内部統制の状況について文書化することが必須であり、その文書化は専門的知識を必要とし、また文書量も膨大になるため相当の時間を有することとなります。以上から上場前から計画的に準備を行う必要があります。
IPOを実現するためには7による証券取引所による審査・上場承認を得る必要がありますが、そのためには主幹事証券会社からの推薦が必須となります。そして、主幹事証券会社からの推薦を得るために、主幹事証券会社による審査を受けることが必要となります。
この主幹事証券会社による審査項目は多岐にわたり、金融商品取引法、会社法、税法、労務関係に関する法律などのほか、証券取引所の上場規程、会計基準などが該当します。このように審査を無事に通過し、主幹事証券会社の推薦を得るためには、上記法令などに継続して遵守できているかどうかといったコンプライアンス体制の整備・運用することが重要となります。
6において主幹事証券会社による審査を晴れて通過し推薦を得た後、最終段階として証券取引所による審査を受けることとなります。この審査をクリアし、証券取引所からの上場承認を得ることができたら、上場まであと一歩となります。
基本的に主幹事証券会社の審査と内容は同様ですが、最近では主幹事証券会社の推薦を得た後、証券会社の審査において要改善事項が見つかり承認が降りなかった、または証券会社の上場承認が降りた後に承認が取り消されたという事例もあることから上場が実現されるまで慎重な対応が必要となります。