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IPO準備会社において内部監査は、直前々期(N-2期)中に体制を整備して直前期(N-1期)から運用を開始する事が一般的です。(ガバナンス体制は上場申請時までに一年以上の運用実績が求められるため)
また、内部監査を実施する方法は、以下の2パターンが主流でした。
しかし、近年上記の2パターンに加え、「3.内部監査を外部にフルアウトソースする」というパターンが増えて来ました。
グループ会社や事業、支店がいくつもあり、主幹事証券から専任の担当者を置く様に指導された場合は内部監査のフルアウトソースの選択肢は取りにくいですが、そうでない場合には選択の余地があります。
そもそも内部監査のフルアウトソースなんてガバナンス的に問題ないのか?という疑問については、証券取引所が発行しているマザーズの上場ガイドブックにも取引所審査のポイントとして、「内部監査業務をアウトソーシングする場合は公正・独立性は担保されると考えられますが、アウトソーサー任せにせず、社長等が内部監査の重要性を認識したうえで主体的に関与しているかどうかを確認します。」とあり、証券取引所も認めています。
また、事例としても新規上場時の有価証券届出書におけるコーポレートガバナンスの状況で、内部監査機能をフルアウトソースしていることが読み取れる事例も増えてきています。
では、具体的に内部監査をフルアウトソースする事のメリットとデメリットは何でしょうか。
まずメリットとしては、コスト面で内部監査の専任者を新たに採用するより低く抑えられる点があげられます。会社の規模や複雑性にもよりますが、シンプルなビジネスであれば内部監査のフルアウトソースは、一般的な水準の管理人員を1名雇用するよりも安い報酬水準で委託できているケースも耳にします。
また、クオリティ面でも監査経験のない担当者が見様見真似で内部監査をやっても、要点が押さえられておらずガバナンスとしてほぼ無意味と言うケースもありますが、社外の経験豊富な専門家であれば要点も押さえられ、内部監査と言いつつ外部監査の様な緊張感を現場が持つため、ガバナンスの観点からも牽制が効いてきます。
管理部門や営業部門の担当者が兼任で回せるならコスト面では良いのかも知れませんが、ベンチャー企業は人員が限られているがゆえ通常業務でもかなりの負荷がありますので、業務命令であれば対応するかも知れませんが、大概はいいかげんな内部監査となり資料準備も遅れ、監査法人の負荷が増え監査報酬の方で結局コスト高になったりするケースを良く目にします。
一方でデメリットとしては、社外の専門家だと担当者がコロコロ変わったり、社内になかなかノウハウが蓄積されなかったりと内部監査の連続性が保てないリスクがあります。
また、マザーズの上場ガイドブックにも記載がありますが、内部監査部門はどこの事業部にも属していない事、すなわち管理部門の下に紐付いていたりせず、組織図上は社長直属等になって来ますので、アウトソース先からの内部監査結果の報告対象も社長になり、アウトソース先の負担になる可能性が出てきます(実務的にはCFOが窓口になり、最後に社長に報告パターンも多いです)。
上記の通り、メリットデメリット書かせて頂きましたが、スマートにストレートな上場を達成されるベンチャー企業は上手く内部監査機能をアウトソースしているケースが多い印象を受けます。
監査法人の目線からしても、監査に習熟されていない内部監査の担当者と一からコミュニケーションを取るよりも、勝手知ったる外部のアウトソーサーから流れる様に内部監査の報告を受け帳票も期限通りに提出される方が好印象ですし、余計なストレスを感じずに三様監査も進みますので、証券審査や取引所審査の際の監査法人ヒアリングでも自然と良い方向に質疑応答が進む傾向にあると思います。
最も重要なポイントになるのが、「内部監査のフルアウトソース」であっても、「内部監査の丸投げ」では無い、という点を会社が理解し、主体的に関与していくかどうか、という点にあると思います。この姿勢があれば、上記のデメリットにある「社内でノウハウ蓄積がされない」という点も緩和されると思いますし、アウトソースしている担当者がある程度変更されても対応できると思います。
IPOを目指される会社では、上記のメリットデメリットを勘案しつつ、内部監査のフルアウトソースという選択肢もあるということを視野に入れて、IPO準備を進めて頂ければと思います。